天は二物を与え給う
写真家「uga」さんの個展「空と人」を見に行った。
会場は銀座にある戦前の古いビルで、中に入ると昭和にタイムスリップする感覚に襲われる。迷路のような石畳の階段、薄暗い照明。このビルの中に店があるようにはみえないが、各階の小さく仕切られた小部屋はほとんどがアンティークショップとなっている。隠れ家のようなお店のオーナーは女性が多いようである。
そのビルの地下一階の部屋には「人」が、三階には「空」が展示されている。全て白黒でおよそA4版くらいの小さい写真なのだが、だんだんインドの北部ラダック地方の土や空の色が見えてくるのが面白い。
空は青く澄みわたり大きい。食料も服も住居も大地から生み出していく人たちはその自然に溶け込んでいる。そして「人」コーナーではラダックの男、女、老人、子供たちのアップが連なる。目も皺も、そしてお世辞笑いの無いどの表情にも味わいと誠実さがある。彼らの人生や歴史や文化が滲み出ているのだ。
特にアップの目は射るような力をもっている。ラダックの人々の顔を見ていくと、この古い建物と共にタイムスリップしていくようだ。その顔つきは少しばかり前の時代に隣にいた顔である。昔の日本人も持っていたが、今の日本人が失ったメヂカラがそこにある。
今の自分たちの顔を思い返すと、ラダックの人々よりずっと薄味なのである。写真であれ、映像であれ撮られるとなるとVサインをする老若男女の目の力は弱い。大地に触れる生活から遠く離れてしまったせいであろうか。
お金が要らない自給自足の生活を堪能しているラダックの人々の強い表情に接すると、日本の近代化で失ってきたものを見つけた様な気がした。
写真家「uga」さんは「戦場のカメラマン」ならぬ、人間の顔と生活を切り取る「日常のカメラマン」なのだ。ホントはウーマンだけど。
5,6年前に「習作をしたいので、くらしのくらの小物を貸してください」と言われて、数点お貸ししたことがあった。これがその写真である。「この写真を見ると、時計の値段を倍にしたくなるね」と感想を言った記憶がある。写真はその存在を再発見させてくれる。
写真は実に素晴らしいアートだなあ。
この写真家「uga」さんは「STAP」細胞を発表したオボちゃん先生に似ている。細胞のことは良くわからないが、「天は二物を与え給う」のだ。(山中伸也先生の時には感じなかった感覚である)このように思われる人は圧倒的に女性が多い。「才色兼備」という言葉も女性にしか使われないしなあ。
これからの「不安ある未来」は女性の活躍にかかっている、に違いない。
男も負けずにがんばるけど・・・・・・・・・・・・・・・・・・