岩谷堂の階段箪笥で遊ぶ猫
30階の高層マンションに住む中年のご夫婦から岩谷堂のタンスのお買い取り依頼があった。大きな寝室に十二段の細身の箪笥(たんす)が一棹、民芸箪笥が一棹、ドレッサー、カッシーナのサイドボードなどがあり、30分程で査定を終える。
ベッドの脇にかわいいスツールが・・・
「あの、このスツールはお売りにならないのですか?」
「これは、ウチの猫が年をとってベッドに上がれないので、ステップにしているのよ」とお客様。
ベッドの奥には猫ちゃんのベッドがツインベッドの隣に並んでいる。まるで赤ちゃん用と思われるようなゆりかご(籐製)である。
「何才ですか」
「12才なのよ、だからこのベッドまで飛び上がれないわけ。
でも自分のベッドで必ず寝るのでこうしてやらないと大変なの」
酔っぱらってベッドに上がれなければ、床で熟睡できる人間とはずいぶんと違う育ち方である。
16畳くらいの居間に入ると、両側には岩谷堂の階段箪笥が左右対称に据え付けられている。
「素晴らしい階段箪笥ですね」
「これは売らないわよ、猫が遊ぶ階段なので」
「猫のための<たんす>なんですね」
(岩谷堂の階段箪笥(五段)は新品でおよそ70万円である。二棹で140万円。
さすが岩谷堂!)
これほど大事にされる猫はどんな顔をしているのか、眠っている猫を見せてもらう。ダイヤ入りではないらしいが、プラチナのネックレスをまとったブチの猫は、やはりおおらかな顔つきをしている。何の悩みも無い人生ならぬ猫生を過ごすとこうなるのだろう。
(このイラストはイメージです)
こうして、「岩谷堂階段たんす」と「プラチナのネックレス」そして「スツール」の
猫関連グッズはお買い取り不成立となった。
家へ帰って周りの家具と我が家の猫とを見渡す。
・・・・・・うーむ
すぐ、値踏みするのも比較するのもやめた。それが健康のためである。
(この写真はホンモノです。ネックレスはルビーではありません)