「どこでもスタジオ」リサイクルの畦せせり
嬉しい事だが、お店も倉庫もお買い取りした品物でいっぱいになっている。買い取り件数が増えていることも確かだが、それを仕分けしたり、値付けをして店に出したりする時間が無いためである。
たった33坪のお店である。3~4名のスタッフでこなしていくのが普通であろう。だが、くらしのくらはホームページのスタッフ紹介(←楽しめる似顔絵いっぱいです。是非ご覧ください)にあるように、総勢14名で毎日テンテコ舞いである。スタッフからは人手が足りないとの悲鳴があがる。これだけスタッフがいるのに、どうして人手が足りないの?と、当のスタッフも首をかしげるほどである。
理由は思い当たる。
例えば、着物の買い取りがあれば、一回で風呂敷の包みで平均5~6個(50~70枚)になる。一点一点検品(シミ、ヤケなどをチェック)し、お店に出すもの、染み抜きや洗い張りにだすものと二人のスタッフが仕分けても半日はかかってしまう。リユースの着物に証紙はほぼついていない。紬であっても、それが越後の紬か米沢の紬かをその文様や手触りで確かめていかなければならない。
家具であれば、検品の後ほとんどのものはクリーニング必須である。更に大半がリペアを必要とする。平均3日ほどでトラックが満杯になると、そのクリーニングとリペアだけで1日から2日はかかる。したがって、お買い取りが終了した夜、トラックの中でライトをつけて作業ということになる。
家具のメーカーにしても、どれにも刻印やメーカーのプレートが付いているわけではない。デザイン、木質、ビスの形状などから原産地や時代、メーカーを探り当てなければならない。簡単に検索してわかるわけではないのだ。
貴金属や洋食器も同様である。超音波洗浄機や漂白剤でのクリーニング、ダイヤの新品仕上げやネックレスの糸繋ぎ、陶器や漆器のホツ部分の金継ぎなど、その作業は多岐にわたる。
それぞれの品物の真贋の検証にもそれなりの時間がかかるのである。
在庫の仕分けが進まないアオリを受けて、ネット販売スタッフの作業スペースは少しずつ狭められていく。狭めていくやり口は「堂々とやる畦せせり(注)」のようである。今や、ネット販売の撮影スペースやストック棚までせせられている。追いやられたネットスタッフは写真のようにトラックの中で撮影という裏ワザまで編み出すこととなる。
撮影していたのはデザイナーズ家具のハンス・ウェグナーのオットマン
「どこでもドア」ほど自由自在ではないが、『どこでもスタジオ』の智恵は「ドラえもん」なみである!
(注)畦せせり
畦(あぜ)は他人の田と自分の田との境にあって、相互に耕作部分を削って盛り上げられた幅50センチほどの土手である。水が漏れないように、相互に泥を塗って補修していくのだが、その時に片方が何もしなければその側は崩れていって耕作地が広がり、補修して泥を塗りつける側は耕作地が狭くなる、真面目な百姓の耕作地が減り、怠け者の百姓の耕作地が増えていくことを言う。
私の田舎では、もっと作為的にやることを「畦せせり」と言い、夜中に畦の補修をやって、自分の側の畦をすくって隣(他人)の田んぼの畦に塗りつけて、自分の田を少しずつ広げて行くことを「畦せせり」と言った。数センチずつ広げるので取られた百姓も気が付かないという。聞いた話で、私は経験ありませんが・・・・・・・・・・・。