モノ語りヒト語り

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下りエスカレーターを昇る!

くらしのくらは期末が4月30日である。国や公共企業体、多くの企業は3月31日なので何かと手続きが複雑になるのだが、会社設立が4月1日に間に合わなかったのだから致し方無い。

第十六期は対前年比僅かに届かずという結果であった。競馬で言えば鼻差という感じである。この16年で対前年比を割ったのは初めて。「アレやコレやがあったからね」と思わずやむなき事由を探してしまっては愚痴になる、間違いなく何かが不足していた結果である。

その不足していたものは何か。考えていくと指が10本あっても足りないが、そのひとつは責任者、私の「口先三寸」である。
2015年4月1日に「お店の賞味期限」というブログを書いて、店のリフォームをすると宣言しているにもかかわらず、一年後の今もそのままである。スタッフからの素晴らしい!改善案や計画はでるものの、実行力が伴わない。

もう一つは愚痴と紙一重になるが、企業の努力も追いつかない消費者の購買意欲の減少である。政府の発表する様々な指標によっても貧富の格差の拡大(6人に1人の子供が貧困家庭)、中間層の減少など景気が上向きにならない環境 が分かる。求人倍率が改善しているといわれているが、それもパート労働者の増加によるもので、決してい兆しではない。明るい情報は大手企業の賃金が上昇していることくらいか。

だが、日本の全企業数に占める中小企業の割合は99.7%(中小企業庁・中小企業白書)である。中小企業がこの日本の今までの発展を支えてきたと言っても過言ではない。ところが、ベースアップなどの報道はほとんどが大企業に関してのものが多い。私達の身の回りの中小企業、というより零細企業の景況感はマイナス30~40といったトコロであろう。

先日、ある衣料品製造メーカーが倒産した。戦前からの会社で年商10億、従業員が100名弱の名のある企業である。その破産管財人(弁護士)より仲介者を経て弊社に査定依頼があった。こういう査定は気が重い。「今度、外国へ赴任するので持っていけないからお願いね」との依頼で伺うのとはワケが違うのだ。いつか自分たちも同じ状況に置かれるかもしれない、という不安の中で査定するのだから。

大きなビルである。こういう査定はアイミツ(相見積もり)が通常で、別の業者と一緒に査定をすることになった。仰々しい破産手続きの文書がドアに貼られている。ガランとした作業所や事務所はサムザムとしている。少し前までは多くのスタッフがところ狭しと仕事をしていたのだろう。今は残務処理を任されたであろう担当者が1名残っているだけである。フロア毎に製造部門や設計部門、ストックスペースがあり、一点づつ説明を受けてリストアップをしていく。大量の事務机からボデイトルソー、工業用ミシン、パターン用大型プリンター、パソコン、コピー機など。そして数えきれないほどの洋服がワンフロアに吊られている。プラスティックチェストにはパールのアクセサリー、それに数珠のヤマである。

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くらしのくらは「ペット以外はお買い取りいたします」と吹聴しているだけに、他業者に負ける訳にはいかない。しかし巨大な工業用ミシンなどは見たこともない。大物は諦めて小物に集中!しかあるまい。

というわけで、「くらしのくら」の販売力では10年はかかると思われる、数珠やパール、コサージュなどをお買い取りすることになった。お買い取りが増えるのは嬉しいが、できることなら会社が倒産しないほうがいい。個人も縮こまらず、お買い物を楽しめる方がいい。

ただ、人々の財布のヒモがますますきつくなっているというのは、店に立つと肌で感じる実感として言えることだ。そんな中で、大手はともあれ、零細企業がリサイクルを続けるということは容易なことではない。

今は、多くの企業が上りエスカレーターを走って登ったバブル期とは逆転の様相である。その当時であれば、上りエスカレーターにいれば弊社のように本人がくだっていても、エスカレーターにのってゆっくり上昇できたのだが、今は「下りエスカレーターを登る」ようなものである。相当の努力をしていかないと振り落とされてしまうような逆風が吹いている。

私が生まれた東北の小都市にデパートが出来たのが小学生の時であった。エレベーターもエスカレーターも生まれて初めてみる驚きの機械だった。デパートは格好の鬼ごっこのできる遊園地となり、幾度と無く下りエスカレーターを駆け昇ったものだ。そんなエスカレーターがほっこりと思い出される。

そんな状況の中で、17期は「くらしのくら」も若返りすることになった。この状況でバトンタッチするのはいささか心苦しいが、若いスタッフには下りエスカレーターを登る体力があるに違いない。

ホームページでは「取り締まられ役」、名刺では「何でも相談役」などと遊んでいた代表取締役の筆者、野坂治雄は退任、新代表取締役社長に「がんばりやの高木麻子」、店長に「はんなりの大石真規子」、副店長に「期待大きい林田」という新体制である。およそ一世代の若返りで、高木と大石はそれぞれ10年、8年のベテラン、林田はまだ1年の経験もない新人である。いまからどう発展していくのか、新生「くらしのくら」ご期待下さい。

このブログも徐々にバトンタッチしていきますのでご閲覧よろしくお願い申し上げます。
 
参考データ

15年度のアパレル関連業者の倒産件数は、前年比6.5%増の311件で、東日本大震災の影響があった11年度以来4年ぶりに300件を上回った。卸売業者が18.8%増の152件と、過去10年で最大の比率。円安によるコスト上昇と消費低迷の板ばさみで倒産が相次いだ。(帝国データバンク)

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