カイダンばなし
今、スカイツリーが人気らしい。「リリアン編み」のように斜めにクロスしている体つきにどうもなじめない。高さで抜かれるものの、東京タワーの容姿にはロマンがある。今でもその人気は衰えず、エレベーターを使わず階段を使って展望台へ行くのが流行りだとか。東京タワーのホームページによると、「東京タワーの「昇り階段」はフットタウン屋上から大展望台(150m)まで続く約600段の外階段で、景色を眺めながら、そして風に吹かれながら、東京タワーを昇ることができる特別なコースです」とのこと。階段を上り下りできるのは、土曜、日曜、祝日で「認定証」まで発行されるらしい。思わぬところで「階段同志」が増殖しているのが嬉しい。
残念ながら「認定証」が無いので証明できないが、15年ほど前、新宿住友ビル(225m55階)の展望台から階段下りをやったことがあった。系列会社の仲間である池田君と住友ビルの展望台で昼食をとった。「エレベーターで降りるのはもったいなくはないか?」何せお気軽登山(可能な限り山頂近くまで車で乗り付け、安易に頂上を制覇、帰りは温泉につかって帰る)を毎週のようやっていた仲間である。
決まれば早い。準備体操もせずに、駆け足で下りはじめる。しばらくすると、おかしくもないのに膝が笑い始め、スピードが落ちていく。前も左右も壁で何も見えない、登山靴ならぬ革靴の音がやたら反響する。もちろん誰にも会わない。二人で外回り、内周りと交代するぐらいしか変化を楽しめない、単調で孤独な冒険。「どうってことないね」と無事下山ならぬ無事下ビル。
だが、翌日は山登りで経験したことのない膝の痛みに唸る有様であった。今、分かったことだが、東京タワーの1.5倍の高さだったのだ。
先日、マンションでの家具一式と雑貨などのお買い取りがあった。「二階がエントランスで、そこまでは階段です」とのこと。さて、現場についてみるとマンションは高台にあり、三階分のアプローチである。しかも階段数は22段から24段。住まいもシケイダイも一階分は「13階段」と決まっているのに!!段数でいえば五階分ということになる。
キャビネット4、ベッド2、ダイニングテーブルセット1、ソファーセット1、フロアスタンド5、雑貨を入れた折りたたみコンテナ28、全部で2トントラック一台と箱バン一台分である。結局、階段に厚い毛布を毛氈(もうせん)のように敷きしめて引き下ろすことになった。格好悪いが、体が資本の仕事である、ここでスタッフがぎっくり腰になったら笑えない。
登山も仕事もトレーニングは必須である。クッションのある運動靴を履いて東京タワーの認定証を手にするぞ!