データを生かす会社とスタッフ
6月14日の報道によると、音楽、映像ソフト販売大手のHMVジャパンがインターネットの音楽配信に客を奪われ、日本発祥の地、渋谷店撤退を決めたとのこと。この撤退は音楽業界にとどまらず、世界の消費形態(店舗のありよう)が根底から変わる象徴的なターニングポイントになるような気がする。本が無くなるかもしれないアイパッドに続く衝撃である。
数日前、業界大手のトレジャーファクトリー主催の「ネット活用術セミナー」に参加した。具体的なデータに裏付けられた説得力のあるセミナーだった。示されたデータによると、買い取り価格構成比がネット広告32.5%に対し、タウンページ広告3%。又、ある店舗のデータによると買い取りの動機はネット22.3%に対し、折り込み広告6.9%とネットの優位性は拡大の一途らしい。
「くらしのくらの場合は!」と偉そうに比較してみると、買い取り件数比率はネット40%、紙媒体12%、口コミ、店頭15%とネットの割合が高い。ネットに力を入れてきたというより、広告費削減が結果としてネット依存率を高めているだけなのだが・・・・。
今や積極的にインターネットへの取り組みを進めていく会社が生き残っていく時代なのだろう。広告の面でのネット利用は避けられないが、ネット上での販売となると、その未来に明るい光がさしていると確信が持てない。どんな小さな店も大きな仕事が出来るネットの可能性は否定できないが、接客を通じた人情あるお近所付き合いが消えていくことも否めないのだ。その両輪を生かしながら、どのようにこの仕事を伸ばしていけるのか、考え込んでしまうセミナーであった。
思い起こせば、この業界に入ってばかりで右も左もわからなかった10年前、トレジャーファクトリーの創業者である野坂社長の活躍ぶりを新聞記事で読んで、意を強くしたことがあった。何せ同じ名字(店長も野坂)であったから忘れようもない。学生時代から東京のリサイクルショップをくまなく見て歩いてデータを収集分析、平成7年足立区に1号店をオープンした若き起業者だった。買い取りから販売までデータ化し、買い取り価格を平準化していくシステムを作ったのも、リサイクルに特化したPOSシステムを開発したのもこの会社である。評価の低かったリサイクルの仕事をまっとうなビジネスとして世に認識させた功績は大きい。
また、社長の片腕と言われるS君とは仕事の付き合いが長いが、商品の仕入れ値と売価の適切なコントロール、数十店舗の在庫を把握している記憶力に驚かされる。彼の頭の中にはコンピューターが埋め込まれているのではないかと思われるほどである。トレジャーファクトリーのスタッフはデータを自由に使いこなす。
セミナーのあとS君に愚痴った。
「おいおい、このセミナーに出る前に、折り込み広告を大々的に打とうと決めてきたばっかりなのにどうしてくれるのよ」
また、私は悩める子羊となるのであった。