モノ語りヒト語り

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和菓子もいいが、洋菓子を敵視しない!

来年春からの小学校道徳教科書の記述が「パン屋」から「和菓子屋」に変わるとのこと。日曜日に祖父と散歩する主人公ケンタがいつもと違う道を歩き、まちの新しい魅力をみつける、という内容の中にパン屋さんがでてくる。パン屋が出て来るシーンについて文科省が「学習指導要領(伝統と文化の尊重、国や郷土を愛する態度を学ぶ)に照らし扱いが不適当」との検定意見をつけたのだ。

パン屋やと小学生が接すると「郷土を愛する態度」を学べないらしい。意見を受けて出版社はパン屋を和菓子屋に差し替えた。小手先の修正を暗に指示する官僚の知性が疑われるが、それを受けて和菓子屋に差し替えた出版社の不甲斐なさにも暗澹とする(私たちの店の近くにあった和菓子屋さんは数年前に撤退、今や和菓子屋さんを探すのに一苦労している時代なのに)。郷土愛を理由に、給食からパンやジャムが消えるのもそう遠くはあるまい。

戦争中に「敵性語を使うな」と、欧文社を旺文社に替えさせ、スクイズを擬投打走塁、バントを軽打、トロンボーンを抜き差し曲がり金真鍮喇叭、ハンドルを走行転把と言い替えさせた。そんな時代を思い出させるような、個人の心の領域に踏み入ってくる国の傲慢さを感じる。これが国の目指す「美しい国」なのか。

スタッフは和菓子好きが多いが、ココは洋菓子を応援せねばなるまい、というヘリクツをつけてパウンドケーキ作りに挑戦した。

相当昔だが作ったことがあるので、型は数個残っている。どう作ったかも覚えておらず、以前の製作ノートを探すが見つからない。ネットでレシピを検索すると、アルワアルワで目が眩むほどである。その中で、ホルトハウス房子さんのレシピをもとに作ったという作り方を見つけた。(お店では1万円とか!?)

ホルトハウス房子さんと言えば4~50年前にカレーライスの本で出会った料理研究家である。未だに忘れられないのは、玉ねぎをミジン切りにしてバターで炒める際に、「微笑みながら炒めると美味しくなる」というレシピの一節である。強火で炒めたり、急いで炒めたりすることを諌める言葉だろう。確かに微笑みながら1時間ほどかけてきつね色になった玉ねぎはコクのぎっしり詰まったカレーのモトとなった。(もっとも、そのレシピ通りに作るカレーの香料は10種類以上におよび、カレー1皿いくらになるのか、コストを考えるとドキドキするようなレシピではあったが・・・・・・・)

その房子さんのレシピをもとに作ってみたが、シロウトにはなかなか決まらない。

甘すぎる→しっとり感がない→ラム酒の匂いが残る→焼き具合にムラがある→・・・・・

と、何度やっても別の問題点が出てきて完成版に至らない。5月は毎日、朝に晩にケーキを食べ続けた。もう最後はサンプルが多すぎて、どのケーキがどの配分でつくったものかもわからなくなる。
ケーキの調理の記録を正確につけていくことはできるのだが、問題はその違いの味を正確に記録できないことである。それは作る私の性格!に依るのだろうが・・・・・・。

そのうち、外野席から「フルーツパウンドより、バナナや紅茶パウンドの方がいいな」など気ままなアドバイスが飛び交い、試作から1ヶ月を経た今もなお、誰かに差し上げられるようなパウンドケーキができないでいる。


★各材料0.7パウンドで2本作成。型の材質も大きさも異なるために焼き具合が難しい。

試作ケーキを食べてもらったスタッフからは「ケーキ作るのが好きなんですか?」とよく聞かれる。ケーキだけではなく何かを作るのは好きなのだが、あえてケーキ作りの魅力を言えば、理科実験のような精密な計測が必要になるということだろうか。

それぞれのちょっとした分量がデキに影響してくる。ケーキ作りに秤は必須である。適度な甘さにするために砂糖や小麦粉などの原材料を少しづつ増減させていく面白さは実験に近い。ベーキングパウダー3グラムを加えるかどうかでしっとり感も変わってくる。また、オーブン温度も170度で50分の場合と、180度25分の後160度で35分の場合とで微妙に出来具合は変化するのである。

未だ諦めずにパウンドケーキに挑戦しているのは、オーブンで焼いている時に部屋中に充満する卵とバターの混じった小麦粉の焼けた匂いにある。この匂いを部屋で味わっているときがケーキ作りの至福の時間である。食べるよりも充足感を感じるのは、自分でもいかがか、と思うのだが・・・・・・・。

今年中には、皆様にも味わっていただけますよう精進いたしますのでご期待下さい!

補 パウンドケーキの語源は砂糖、バター、小麦粉、卵をそれぞれ1/4パウンド(約113グラム)を使用して1パウンドのケーキができることによる。今回遅ればせながら知った。

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