モノ語りヒト語り

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ご飯には土鍋がよく似合う

統計によると、ついにご飯がパンに負けた。2006年には魚も肉に負けていた。日本の食生活の根幹をなしている食材の消費量が、減少の一途である。

「家計調査の1世帯当たりのコメの購入額は、比較が可能な昭和38年以降、一貫してパンの購入額より多い状況が続いていましたが、このところ減少傾向が続き、去年、初めてパンの購入額に逆転されました。(NHK・NEWS・WEB 2012.6.5より)」。

敗戦とは食文化でも負けるということである。戦後「栄養改善運動」と称し、「パンを食べないと栄養失調になる」などという戦勝国(アメリカ)のデマに翻弄された。

アメリカの有り余った小麦粉を消費させるために、組織的な食生活の改革(?)を国をあげてやってきた。飢餓状態であった日本は受けざるを得なかったであろう、ことは理解できるが・・・・・。

都会から田舎までキッチンカー(宣伝カー)が、何やらパンの音楽を流しながら走り回っていた。そして、小学校の給食はコッペパンとジャムとなった。その当時はパンも脱脂粉乳も珍しく、昼が待ち遠しかった小学生であったが・・・・・。

かっての戦勝国アメリカでは、ダイエットのためとはいえ、肉から魚へとシフトしている人が増えているというのに、今や日本では、パンとケーキが「デパ地下の華」となった。

そうだ「日本人はご飯を食べよう!」いつもご飯は食べているのだが、電気釜を使わないで美味しいご飯を食べよう、と考えた。そのキッカケはこのデータが発表されたことだけではない。

家に電気の瞬間使用量がわかるスマートメーターをつけたことがキッカケである。朝、炊飯器にスイッチを入れるとメーターは突如跳ね上がる。大型テレビ6台分である。こんなに大量に電気を使っていいものか。今まで、たいして気にもせず電気を使い放題してきたことが、結果としてあの原子力発電を黙認することになってきたことは間違いない。「たかが電気」だ。こんなもの使わないでご飯を食べよう。

買いました。厚さ30ミリはあろうかという、分厚い土鍋。重いし手間がかかる。まずは使う前に目止めが必要である。洗った後に自然乾燥し、冷や飯を入れてお粥を作る。約1時間。きれいなお粥の出来上がり。だが、すぐには食べられない。そのまま1時間以上冷やす必要がある。何年ぶりだろう。おかゆ。シャケや昆布をふりかけて食す。うーーむ。3杯お代わり。その後、洗って乾燥。

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いよいよ翌日朝。いつもより早く目が覚めるのは興奮しているせいか。米を研いで、20分浸水。中強火で12分。いい匂いだ。火を止めて20分蒸らす。

「はじめチョロチョロ、なかパッパ、赤子が泣いてもフタ取るな」と教わったご飯炊きは、簡単過ぎて「いまいずこ」である。

二重の土鍋のフタを取る。炊き立てごはんが、ふっくらと小さな山を作っているではないか。へらで返すとそこにはオコゲが・・・・・!何年ぶりだろう。おそらく電気炊飯器を使い始めてから、オコゲを家で食べたことがないのだから・・・・・・。お米が一粒一粒そのかたちを失わないで立っているのが懐かしい。これだけ美しいご飯には、笹川流れの海水塩しかあるまい。まろやかな塩と甘いお米のハーモニー!至福の時間である。

それに噛みごたえがあって、食べている時間が楽しい。十分噛まなければならないので、きっと歯にもいいのに違いない。(これは単に水加減のせいかもしれないが) というわけで、早起きが楽しい毎日となったのでした。

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「富士(ふじ)には月見草がよく似合う」と太宰治は書いたが、「ご飯には土鍋がよく似合う」と小さく言い換えさせていただくことにしよう。

当店でも、昔ながらの土鍋はなかなか売れない。売れるのはビタクラフトのような多層構造鍋である。こう書いた以上、店にも置かなければ・・・・・と、現在、土鍋一点在庫しております。どうぞよろしく。

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