モノ語りヒト語り

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仲良し五人兄弟顛末記

この店長日記の主は三月生まれである。三月生まれは“移り気”で“浮気性”というのが定説である。要は、何をやっても長続きしないというのである。ジャクリーヌ・ササールの「三月生れ」(1958)というイタリア映画で、そのことが世界共通だということを思い知らされたものであった。(少し古すぎたか・・・)

という訳で、店長の怠慢ぶりにあきれたスタッフもこのコラムに参画し、「継続こそ力なり」ということをこのコラムの「主」に自覚させようということになった。

第一号は、経験二年ながら、全ての分野で核となっている女性スタッフymさんの「ヒト語り」である。

“あの子”がここにやって来たのは、まだ少し北風が冷たい春先の事。沢山の兄弟から一人だけ離れてちょっと心細そう。お店のスタッフの反応は「わぁ~!」と喜ぶ者、???と首を傾げる者とさまざま。今までとっても大切にされていたのでしょう。丸々と太って、ツヤツヤしています。早速スタッフにお化粧直しをしてもらい、名札を付けてもらいました。

お店の一番目立つ入り口にチョコンと座って、毎日ニコニコお客様をお迎えです。「ま~、面白いのね。」 、よしよしと撫でて下さるお客様。名札をお読みになって「知らなかったわ。初めて見たわぁ。」 と前から後ろから眺めていられるお客様。
すっかりお店のマスコットです。

ある日は畳の上に座って、またある日は店外のテーブルの上で日向ぼっこをして、“あの子”は新しいご主人様を待ちました。一ヶ月位経ったある日お若いお客様が“あの子”の足を撫でながら、嬉しそうにお家に連れ帰ってくださいました。“あの子”もすごく嬉しそう。

しばらくすると、妙な事が起こりました。またあの子が入り口にチョコンと座っているのです。ご主人様と仲違いをしちゃったのかしら。そんな事する子じゃぁ無いのに・・・。

「ねえどうしたの?」“あの子”にそっと聞きました。“あの子”はニコニコした顔で答えます。「僕は五人兄弟の二番目さ!今度は僕の番!」

いつの間にか桜は散り、厳しい夏も過ぎ、あの二人目の兄弟も新しいご主人様と出会い巣立っていきました。もう兄弟は後、三人だけ。

秋晴れの爽やかな高い空を、三番目の“あの子”は毎日見上げていました。あれは深沢神社のお祭りの頃、お問い合わせの電話が鳴りました。「以前お店の前を車で通過した時、確かビリケンさんがいたと思うんですが。今もいますか?いる?住まいは青森の八戸市ですが 送ってもらえますか?」こうして三番目の“あの子”は遥か離れたお客様の所に。

お客様にとても気に入っていただき、四番目の兄弟も続いて八戸に行くことになりました。八戸は きっと今が紅葉の一番美しい頃。“あの子達”も二人一緒になって、優しいご主人様のもとでとっても喜んでいる事でしょう。

“あの子”、ビリケンさんは幸運の神様。アメリカのアーティストが百年程前に製作した像で当時「 幸福の神様」として世界中に流行したそうです。日本では大阪の通天閣の展望台にあるものが有名です。ビリケンさんの足の裏を撫でると願いが叶うそうで、スタッフも人知れず足の裏をなでなでして色々なお願いをしました。

このビリケンさんたちは 1996年に通天閣を舞台とした阪本順治監督の映画『ビリケン』のプロモーションに使われたグラスファイバー製、身長約70cmの五体です。

20051124

最後にお気付きの方いられますよね。

お店に残った末っ子の“あの子”。あの子はどうしたのかって?心配はご無用!末っ子は今までいたお家のお嬢さんが「やっぱりお家にいてね」と連れ帰って下さり、以前のように仲良く遊んでいるそうです。

幸運を招くというビリケンさん。店のスタッフも幸せになりました。日本各地に行っても周りの人達にいっぱい幸せを運んで下さいね。

(ビリケン五体を売って欲しいというご依頼がありました。店が狭いため、一体売れては又一体と店頭に展示して販売したものです。)

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