男のロマン
当店は、駒沢公園通りから等々力へ行く道沿い、変形五差路の信号脇にあります。 店の前の道を、渋谷行きや成城学園前行きのバスがほぼ15分間隔で通過していきます。
時々、信号待ちで停車しているバスの乗客の方が店内を眺めているのをお見かけする事があります。
突然頭の上から「ねえぇ、そこにあるそのレトロなオルガンおいくらするの?」と声がかかり、振り向きますと、丁度赤信号で信号待ちをしているバスの窓から身を乗り出した乗客の方が微笑んでいます。
大慌てで、青信号に変わって走り去ろうとしているバスの窓に向かって「〇〇円でーす。」「あらっ、いいわね。待ってて!そこのバス停で降りるから。」と、少し先のバス停から駆け戻って来られるお客様をお待ちする事もあります。
先日の夕方、初めてお見かけする、30代後半、スーツをきちんとお召しになられ、 重そうな書類バッグを肩から提げていらっしゃる男性のお客様がご来店なさいました。
店の入り口脇に置いてあるケビント(消毒した器具を入れてある、ガラス張りの白い医療器具棚。)の中をじーっとのぞいていられます。ケビントの中には「Nゲージ」と言われる機関車や電車のミニチュアと外国製のミニカーを一杯展示しておりました。
「いやあ、先日等々力からバスに乗って渋谷まで行く途中、この店の前でバスが信号待ちしてね。何となく店の中を窓から見ていたら、電車や車の模型があるのを見つけちゃったんですよ。
ただのオモチャか、それとも模型なのかずーっと気になっていたのだけど、忙しくてなかなか来られなくて。いやあ~、うれしいなあ。ちょっと出してみていいですか?色々な電車を集めているのだけど、京浜東北線だけは無かったんですよ。」
お客様はそれは嬉しそうに京浜東北線の電車を取り出し、「これだ、これだ。いやあ~、こんな事ってあるんだなあ。」と子供のように引っくり返したりしながら見ていられます。
「これ、ちゃんと走りますか?」と質問されたものの模型には全く知識が無く、当店の模型担当のスタッフは、その日は配送で店にはおらず、「走るとは思いますが、古いものですので・・・・。確実なお答えが出来なくて申し訳ありません。」と申し上げるしかありませんでした。
お客様が「今度、家にあるレールとモーターを持ってきて、試してもいいですか?車輪の幅とか、連結とか確かめたいのですよ。いやあ、きっと大丈夫だと思うんですよね。レールの上を走るところを早く見てみたいなあ。今、仕事がちょっと忙しくて 今日も閉店までに間に合わないかな?と思ってあせって来たんですよ。何とか時間を作って来ますので。」とおっしゃいます。
これぞ、リサイクルショップの醍醐味?です。ご不要になられたお品を必要としてくださる方、探し求めている方は必ずいらっしゃるのですね。このようなバトンタッチが出来たら私達も本当に幸せです。そして、以前の持ち主の方の思いもきっと次の方に受け継がれていくのでしょう。
お客様!
是非、早くいらして電車を走らせて下さいね。スタッフ一同、首を長くして待っております。
男のロマン号、深沢5丁目より発車ー!!という日を。
(「ヒト語り」2度目の登場、女性スタッフYMさんの日記より)