めぐり逢い
今、白家具が人気である。ニーズがあっても供給が追いつかない。そんな中、いくつかの住宅棟と商業施設のある高級集合住宅(中に公園もあり、およそ800戸の住宅)のマンションにお住まいの方から引越しに伴う家具の買取依頼があった。
その中に白のキッチンボードが含まれている。油圧式の開閉扉、表は鏡面仕上げという「出来の良い」家具である。だが、そのマンションも「出来がよい」ので、部屋の入り口からエレベーター、そして玄関までボードなどで養生をする必要がある。更に、マンション群の通路が長く、結構手間のかかる仕事となった。
お買い取りの後、「クリーニング中」として店内に設置した日、夫婦連れのお客様が来店した。扉を閉じていたテープをといて中をお見せした。扉を下にダウンさせると、コンセント付きのステンレス台が引き出せる。キッチン周りをすっきり見せたい方にはピッタリである。
「いいね。で、いくら?」
「昨日入ったばかりで、点検もクリーニングもしていないので、後ほどお電話いたします」
お電話の後、昨日いらした方の娘さん夫婦がご来店した。娘さんが転居することが決まり、白い家具があったら探しておいて欲しいと、ご両親に頼んでいたらしい。「くらしのくら」に入ったばかりの白いキッチンボードがあったよ、と聞いて当のご本人が見に来たというわけである。
「え?これ?・・・・・アソコにあった家具じゃない?」とご主人に確かめる奥様。
「これ、どこで買取ったんですか?」
「えー・・・、それは・・・・」当店のモットー、秘密厳守を貫くスタッフ。
「これ、あの部屋にあった家具に間違いないよ」とご主人。
「あのお部屋って?」とうろたえながら聞くスタッフ。
「エックスガーデンZ棟の9876号室。今度私たちがそこヘ引っ越すんだけど、内見で部屋を見せて貰った時に、台所にあった家具じゃないかと・・・・・」
「う、う、・・・・・・・・」まさか!お買い取りをした部屋と同じではないか。秘密厳守どころか、既に知られている!
「同じ部屋です!」とキッパリ。
「やっぱり!・・・こういう家具が欲しいねって話していたのよ」
「そ、それはホント良かったです」まさかということがあるのである。
スタッフがつぶやいた。
「こういうことだったら、大変な搬出などしないでそのまま置いておけばよかった・・・・・」