ホントの修学旅行
スタッフみんなで積み立てをしていて、年に1回社員旅行をすることになっている。
「今度は東京ディズニィーランドに1泊2日というのはどうかな」と若いスタッフに気を使う店長。「え?そんなとこより、陶器など勉強できるところのほうがいいんですけど」とスタッフ。
というわけで、オールスタッフ10名で石川県金沢市に行こうということになった。
そこは、輪島塗、山中漆器、九谷焼き、加賀友禅とおよそ私たちの店で扱っている商品と関わりが深い。旅行代理店にはいわゆる観光名所とか、○○会館には行かないでいいから、現場を見たい、実際創作している人の話が聞きたい、と無理な要望を出した。
数日後、石川県観光協会を通じて山中漆器は川北良造さん、九谷焼は三代目徳田八十吉さん、加賀友禅は毎田健治さんの工房にお伺いできる手配をしていただいたとの連絡が入った。
ご本人が不在の場合はお弟子さんが対応していただけるとのこと。まさか、人間国宝の方とお会いできるとは考えていなかったので、ちょっと驚いた。ひょんなきっかけから、本当に研修旅行になってしまったのである。
旅館とマイクロバスは手配したが、添乗員はいない。スタッフそれぞれが「輪島塗」「山中漆器」「九谷焼き」「古九谷」「加賀友禅」「和菓子」「歴史スポット」と担当し、バスガイドをすることになった。
初日
11時 小松空港着 昼食小松うどん(まず、和菓子と抹茶が出るのに驚く)
徳田八十吉生家、小松博物館(ともに次回展示準備のため休館)
徳田八十吉工房(三代八十吉さんに話しを聞く)
山中漆器 川北良造工房(川北さんに話を聞く)
湯湧温泉泊(古九谷の謎についてケンケンガクガク。金沢の人がいるところでは気が引ける)
2日目
旅館のすぐそばにある夢路記念館を急ぎ足で見て、兼六園へ。
ボランティアガイドの案内で金沢城を外観から見学。ちょうど前田家のおひな様特別展示会をやっていて入館。隣接している県立美術館へ。(国宝 野々村仁青の雉香炉)
香林坊で昼食。
加賀友禅、毎田染画工房(毎田さんに話を聞く)
近江町市場で自由行動。大樋長佐衛門ギャラリー見学、金箔工芸見学。ひがし茶屋街散策
19時 小松空港発
予定していた三人の方のお話を伺うことができたのは、とても嬉しいことであった。徳田さんの話を聞いた後、スタッフは「歴史の勉強をしなきゃ」とつぶやいた。徳田さんにとって関が原の戦いは「ついこの間」見てきたような話なのである。川北さんの木との関わり具合の深さに皆ため息をついた。最後は小雨の中バスを見送っていただいた。
毎田さんはとてもあの絢爛なきもの作家とは思えぬお茶目さがあって、笑いこげながらのお話であった。記念撮影では「私は若い女の娘の方がいい」と小学4年生のめぐちゃんを脇に呼んで笑いを誘った。最初は私たちスタッフも緊張していたが、皆さんには気さくにお話していただき、質問にも良く答えていただいた。
今回の社員旅行は、修学旅行もこんなきつい日程は組まないだろう、と思うほど中身の濃いものであった。バスのなかでは、スタッフがそれぞれの分野の学習結果をリポート。マイクを通じて話をし、それを聞くことというのはお互い勉強になった。バスガイドのありきたりの説明より面白い。
来年は文明の源流エジプトか、はたまた山口県萩か、石川県再訪で輪島か・・・・わが社員旅行は「修学旅行」として続きそうである。
雄雉香炉
雌雉香炉