モノ語りヒト語り

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真夜中のダンディ

深夜11時きっかりに作業がはじまった。まるで夜盗集団のようであるが、これも仕事である。某デパートのイタリアンレストランの店ごとの買い取りである。厨房機器とテーブル、いす(36脚)、洋食器、グラス、ムラノの花瓶などである。デパート閉店後の深夜11時から作業を始めてくれとのことで、腹ごしらえをしたスタッフ5人はデパートに向かった。まずは店舗の入り口に出すまでの2時間が勝負である。

デパートの担当者の注視の下で、大理石の床が傷つかないように養生をして、丁寧に品物を梱包していく。イタリア人オーナーが流暢な日本語で「コレ家ニカザルカラモッテクヨ」とムラノガラスを手にした。何せ締め切り時間のある仕事である。時間が惜しい。「ソレ、ルールイハンヨ」と言いたいのを呑み込んで、黙々と作業を進める。きっかり深夜1時搬出終了。

ほっとしたのもつかの間、そこからの搬出作業が最もスタッフ泣かせだったとは予想もしていなかった。

とにかく店舗のある階の搬出口からトラックまでの経路が長い。エレベータの往復とそこからの長い廊下。何十回と重い厨房機器などを往復していると、昼間下見をしたときの倍ぐらい長く感じられた。ちょっとしたアップダウンが足にひびく。その後の搬出作業は夜明けまでの仕事となった。

品物を満載したトラックは倉庫や厨房機器などを扱う専門のオークション会場へ。すべて終了したのは朝の8時過ぎであった。事前に厨房機器専門業者のアドバイスもあり、作業がスムーズにできたのはありがたいことである。

人気のない深夜のデパートはなかなか経験できない別世界だ。「くらしのくら」はこんなおしゃれなこともやっているのです。

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