モノ語りヒト語り

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大人の街イギリス

この街を歩いていると、明治維新の頃、伊藤博文たちが視察に訪れた時と同じ風景ではなかったかと思う。石畳や煉瓦で積まれた家も何百年の歴史を感じさせる。田舎は勿論のこと、世界でも有数の都市でもコンクリートの建物は少ない。

ロンドン市内のアンティークショップと、郊外のアンティークフェアを巡ってきた。シルバー食器やティーカップなどを仕入れたのだが、モノよりマチのアンティークぶりに圧倒されてしまった。中世であれビクトリア王朝であれ、当時を舞台とした映画のロケーションをやっても、手を加える必要はどこにもないといった風情なのである。石造りの家がタウンハウス状に連なった風景は地域によっても余り変わらない。
地震のない風土も幸いしたのだろうが、自分たちの歴史に揺ぎ無い自信を持っているように思う。

また、風景に落ち着きを感じるのは、いわゆる人造のもの(規制するもの)が極端に少ないからであろう。ガードレール、くどい道路標識、野立て看板が無い。交差点もサークルになっていて、右側優先と言うルールのみで信号は無い。あるのは緩やかな丘陵と草原である。道が一筋、線を引くように流れていて、走り抜けると、吸い込まれるように街に入っていく。

『フェア何処(いずこ) 街行く人はアイドンノー』

ロンドンより約200キロ北西にあるコベントリーで開かれているアンティーク・フェアは、余り宣伝をしているわけでもないらしく、街で聞いても誰も知らない。

開催場所の体育館を頼りにようやくたどり着いた。入場料1パウンド(約250円)。いわゆる幕張メッセなどで行われるイベントのように、照明や店の表示板があるわけではない。体育館が会場で、50店ほどの店が机の上に品物を広げているだけで、フリーマーケットの雰囲気である。

ただ、陶磁器も銀食器もチャイナドールも手入れが行き届いている。銀食器はしっかりと磨かれていて新品のように光り輝いている。陶器はホツがあるものなどはほとんどない。ひとつひとつが丁寧に扱われているのが、ごく自然に理解できるのである。ホールマークを発案し、刻印を残した几帳面な国民性がこのような田舎のマーケットでも、よく感じ取られる。

20070625

商品についても、一つ聞けばまくし立てるように(英語が良く分からないためだろうが)、説明をしてくれる。アメリカ人ほど陽気ではないが律儀である。

「このスプーンは私の祖母が持っていたのよ、年代については母に聞いてみるわ」というようなこともあるので、業者ばかりではないのかもしれない。フェアでは、ごく普通の人がごく普通にアンティークを買い求めているようだ。

数多い入場者の中で、旅行者は私たちだけであった。そして、一番長く滞留し、一番多く買った変な外国人であった(に違いない)。

というわけで、ロンドン郊外で3日、ロンドン市内で2日小物を仕入れてまいりました。近いうちに、チョットしたアンティーク小物フェアをやる予定です。ご期待下さい。

(1901年、倫敦留学中の夏目漱石はダリッジ美術館を尋ねて 『絵所を栗焼く人に尋ねけり』と残している)

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