誰も責任を取らない国
6月30日、家電などの安全性示すといわれた「PSEマーク」がなくても電化製品を販売することが出来るように、今秋、法改正をすると報じられた。 「PSEマーク」の無い電化製品を販売すると、100万円以下の罰金または1年以下の懲役という罰則が、なくなるのである。
その理由は「経済産業省が中古品の実態を調べたところ、旧表示品(PSEマークが無い)も安全性には変わりが無いことが確認できた」ということだ。
なぜ、「PSE法」を施行する前にその確認をしなかったのだろうか。ヤフーオークションで購入した場合は、(PSEマークが無くても販売可としていた)国はその安全性に関知しないと平然としていたのだから、真剣に国民の安全性を考えてこの法律ができたのではないと言うことは明らかである。
今の時代、リサイクルによる資源の無駄遣いをやめていかざるを得ないというのは、世界の常識ではなかったのか。それでもなお、この奇妙な法律の施行にこだわったのは、中古品の流通によって新品販売に影響がでてくるメーカーからの圧力があったのではないか、とも勘ぐれるのだ。
いくつかの零細リサイクル業者はこの法律が施行されて、やむなく廃業していった。業界全体でおよそ20%の売上げ減少となったとの推定もある。また、1200Vの電圧をかけて絶縁耐力試験をすれば、販売しても構わないということで、高価な試験用機械を購入した業者も多い。
一般消費者の側から言えば、「安全性に変わりが無かった電化製品」を売ることが出来ず、やむなく高価なリサイクル料金と運搬費を負担し処分せざるを得なかったのである。
このように多大な犠牲を強いた経済産業省は、消費者や撤退した業者に陳謝するのだろうか。あるいは無用な機械を買い戻してくれるのだろうか。
私たちの店で扱っているアンティークキャビネットの照明ランプ、ペンダント、フロアランプにはPSEマークがあるはずも無く、06.3.14のモノ語りに書いたように、そのまま電化商品の展示販売を続けてきた。摘発された時に、その法律の無意味さを主張するしかないと、考えていた。その機会がなくなったのは嬉しいが、国の勝手気ままな朝令暮改につきあわされたと考えると、なんとも虚しい1年間であった。「美しい国」の前に「(国民のことを)考える国」であって欲しいものである。