モノ語りヒト語り

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エコノミックアニマルの今

高齢者の万引きが増えているとの新聞記事がのった。その要因は「寂しさ」らしい。何とも切ない世の中である。当店もその被害にあっているので、ますます複雑な気分でその記事を読む。

最近、万引きされたのは、色違い江戸切り子のショットグラスである。当日朝は、間違いなく六客あったのだが、閉店間際、その中のグリーンのグラスだけがなくなっていた。防犯ビデオを点検すると、バッグに入れるおばあさんらしき画像が見つかる。セットで販売しているものの、一客にすれば1,000円。同じ切り子なら人気があって、比較的値のはる赤の切り子もあったのに。お金に換えようと思えば、他の値のはる品物に目を付けるはずである。よほど気に入ったがお金がなかったのか、コレクターなのか。生活の足しにする万引きでないのは確かである。

万引きとは言えないが、近くの神社も被害を受けている。最近の賽銭泥棒は「手を貸してあげたいくらいの」お年寄りだという。ビニール傘の先にテープを貼って隙間から取るのだが、札が少ないから時間もかかる。昨今は硬貨と言っても圧倒的に1円玉が増えてきたらしいので、時間をかけてもくっつくのはアルミ銭である。

65歳以上の高齢者の犯罪はこの20年間で5倍に急増、そのうち万引きの検挙者の22%は高齢者が占めているという。

1.体力が無くなった元泥棒が楽な万引きに移行した
2.所得が二極化し低所得者層の高齢者の負担が大きくなっている
3.今の生活に困ってはいないが、将来が不安だから今はお金を使いたくない
4.高齢者の孤立化が進んでいる

今、65歳以上の高齢者は高度成長期に「エコノミックアニマル」と揶揄された世代だが、いわば日本の繁栄を推進させた人たちである。

黄昏始めた今の日本には、先輩たちが疲れた体を休め、安心して老後を楽しめる場所が無くなってきているのかもしれない。

20101217

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