モノ語りヒト語り

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地方の夜、都会の星

定休日にスタッフ全員で古伊万里研究会を行った。実際の碗や皿を手にとって、10時より15時までの長時間に亘る勉強会である。会が盛り上がっていた頃、旧知の古美術商から店長の携帯に呼び出しがかかった。秋田で買い取りをしているが、量がハンパでないので、トラックで来てくれないか、ちなみにスタッドレスタイヤでないと走ることが出来ない、ちなみに出きればロングボディの方が確かだ、と言うのである。勉強会は後でもできるが、お買い取りのチャンスに「また今度」はない。

急遽、店長とスタッフの2名がスタッドレスをはいたワゴンで出発し夕暮れ時に到着。すでに街は薄暗く、行きかう人も少ない。道路に雪はないが、道端にはトーチカのように雪のカタマリが点々とあり、駐車するのも容易ではない。

大きな邸宅の裏庭には蔵が二棟あり、その中のもの全部をお買い取りすることになっているらしい。22時、一旦作業終了。蔵から外へ出ると、薄暗い空間に慣れた目に満天の星が眩しい。街は、雪を踏みしめる音すら気になるほどの静けさである。走る車も無く、歩いている人を探すことも難しい。足元から冷えてくる夜は、深い静寂に包まれている。

翌日、早朝より作業開始。蔵の中での朝の寒さはこたえるが、裸電球の下での作業よりは気分がいい。軒下の雪は朝の太陽に照らされ、ザラメのようにキラキラと光っている。蔵から道路までの15メートルほどの通路で台車を走らせてみるが、たちまち雪にのめりこんで動けなくなる。品物は手に持って運ぶしかない。

夕方、およそ200箱の骨董や作家もの、贈答品と小家具など「オタカラ」を積んだ「スタッドレス装着のロングボディ2tトラックレンタカー」とワゴンで東京へ戻った。急ブレーキ厳禁の高速道路走行である。東京に着いたのは深夜、出発してから3日目になっていた。

高架の高速道路から視界一杯に広がる光。林立するビルに点滅するまばゆいばかりの星である。都会のエネルギーは美しくも、凄まじい。昔ながらの夜を味わってきたばかりの体に感じるけだるさは「時差」のようだ。
 
深夜ですら車の列は途切れることなく続き、大橋ジャンクションでは自然!渋滞に巻き込まれ、あのほの暗い静けさの安堵感に後ろ髪を引かれながら店に着いたのでした。

20110303

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