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「どこでもメール」より「どこでもドア」

「どこでもドア」というドラえもんの秘密道具は子供にとっても大人にとっても憧れである。ありえなくても想像することで十分に楽しいのだが、今や多くの夢が現実のものになってきている。手紙がファックスであっという間に届いたり、遠くの人とテレビ電話で話すことができたりする。メールがこれだけ普及すると、万年筆片手に思案しながら恋文を書く人間は絶滅危惧種になるのだろうか。

そのメールを受けたり、送ったりする従来のやり方(メールソフト)をGMAILに変更することになった。というのは、「くらしのくら」のパソコンに列ができてしまうことを解消する必要があったからである。
パソコンは店に3.台、事務所に1台、倉庫に3台と7台もあるにもかかわらず、店の1台のパソコンにスタッフが集中してしまうのである。それには、見積書などの文書、顧客住所録など様々なデータが入っている上に、メールの受信はそのパソコンでしかできないために取り合いになってしまう。

「ネットとパソコンの専任ドクター」であるスタッフYから「GMAIL」にすれば「どこでもメール」できるのでパソコン渋滞解消に役たちます、との提案。デスクトップには従来のメールソフトとGMAILの2つが鎮座し、いつでも切り替えられる状態のまま4ヶ月の月日が経ってしまった。慣れたものから新しいものに変えるのは面倒、このソフトは難しそう、みんなが覚えるのは大変、タイミングを見て切り替えないとトラブルが発生する危険がある、データが巨大企業に全て把握されてしまうこと、などありとあらゆる理由をつけて動かなかったのだが、受信メールが増え始めて1台のパソコンでメール処理するのはもう限界と、ついに1月15日、ソフト切り替え断行。

多様な分類ができる。添付写真が一覧で見ることができる、どのパソコンでも送受信ができる、など今までに無い優れものである。

だが、便利さには必ず危険な要素が隠れている、という不安が現実のものになるのにそう時間はかからなかった。

メールが着信するたびに私のスマートフォンが「チン」と鳴るのだ。何かと思うと、「くらしのくら」にメールが届いたお知らせである。これを見ない訳にはいかない。運転中にチンが鳴れば、信号待ちを待ってメールを開く。な、なに、「カッシーナのマラルンガソファーを買い取って欲しい」?車を止めて携帯から返信。長い文章を片手でさらさら打つほどもう若くは無い。途中で断念。良し、返信定形文を作っておけば携帯からもメール返信がやりやすくなるぞ・・・・・・・・・・・・。

というように、昔の「モーレツサラリーマン」に先祖帰りしてしまうのであった。

思い出すのがポケットベルである。仕事に出て、喫茶店で油を売っているとポケベルが鳴って、公衆電話に駆けつけるたびに、このような機械を恨んだものである。

仕事はますますスピードを要求され、ネットの外部の巨大な力に依存していく。
ゆとりやムダがどんどん押し潰され、合理的な人間関係が幅を利かせていくのだ。

と、嘆きながら、今日も家へ帰って、「今まで見ることができなかった査定依頼のメール」を開いて「今までやることのなかった家庭内残業」をしてしまうのであった。

「どこでもメール」は要らない!「どこでもドア」でカリブ海にでも行きたい!!

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