アンティークの館に巣食う蜘蛛
全国のあちこちに「○○のビバリーヒルズ」と称される開発エリアがある。ここは他よりも高級な宅地開発をしましたよ、とアピールするには格好の呼称といえよう。
ここ「○△○△ヒルズ」と称される開発地域は、本家本元のビバリーヒルズも一目置かざるを得ないようなエリアである。一戸あたり300坪から1,000坪の広い敷地で、広い道路に面した芝生のアプローチの奥に優雅な邸宅が並び、ここは日本か、と思わせるような風景である。投げ込み式ではない日本では新聞配達の人は苦労するだろうなあ、と余計な心配をする。
そのエリアの道路正面入り口には警備員こそいないが、「家の見学はご遠慮ください。防犯、防災のためカメラ作動中」の看板がたてられ、容易に通過できない威圧感がある。
(ちなみに、ストリートビューでこの地域は見ることができない。撮影の許可を求めて拒否されたのであろうか。私の家は窓から顔を出した猫まで無断でアップされているのだが・・・・・・)
そんなエリアでアンティーク一式のお買い取り依頼があった。お客様は都内にお住いで別荘として使っていたとのこと。売却するので、ともかく部屋の中のものを全部引き上げてほしいとのご依頼であった。
高速道路でおよそ2時間30分かけて査定にお伺いした。アプローチでは犬の石像がお出迎え。玄関のドア、たたきを上がったところのドアもアンティークドアの作り付けである。仕切りの漆喰には1メートル大のエッチングガラスが組み込まれている。(取り外すことが難しく、お買い取りは断念)
8室の各部屋に絵画が飾られ、窓にはステンドグラス、窓や仕切りの上部にはレースやゴブラン織りの天蓋が取り付けられている。照明はキャンドルシャンデリア、アールヌーボーの吊りライト、フロアスタンド、壁掛けのライト(ブランケットだけで28点)。夜はきっと時代を遡るような雰囲気になるに違いない。家具は洋ダンス、ミラーバック、キャビネット、デスク、ベッド、ペルシャ絨毯に至るまで全てが「洋物」である。勿論、庭も西洋ガーデンのしつらえである。他に時計、ミシン、温度計、動物や天使の置物などが部屋全体に飾られており、made in japan は冷蔵庫と洗濯機くらいしかない。
素晴らしい「アンティークの館」!ヨーロッパのお城に入ってしまった気分である。だが、長い時間おじゃましていても、査定する当方はなかなか日本人から脱皮できない。
お買い取りが決定したものの、搬出作業が大変な事になった。ダンボール箱で50箱、家具を含め2トントラック3台分となり、延べ14名のスタッフで3日かけて搬出を終了した。(アンティークミラーバックは分解できないため4人がかりで、持ち上げ、搬出。庭のアイアンベンチは2人がかりで休みゝと、体力勝負の仕事となった)。
写真はお買い取り品の一つ、蜘蛛と蝶のミラーフレームである。
「え!」スタッフが思わず声をあげた。
スタッフが採寸しているところを撮影したのだが、影を見ていただきたい。蜘蛛が蝶を捉えようと構えているのが良くわかる。蜘蛛の凄みが・・・。デザインした職人はこのような影を想像して作ったに違いない。(この棚にはモノを置きたくないなあ)
こんな発見がアンティークの楽しいところなのです。