モノ語りヒト語り

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テトリスとジンクス

昨年の秋、北海道旅行を計画したものの、豪雨で夜行列車が運休となり直前の中止となった。今年6月、あらためて同じ旅行を計画したが、東北地方は大雨とのことで、またもや出発予定の1時間前に運休決定。旅行中は仕事が入らないようにお店の段取りも調整していただけに、店に戻るのも居心地が悪い。旅先に宅配便で送った着替えなどもあり、しばらくは服にも困るという二度目の不運な事態となった。そのマッチングの鮮やかな再来にのけぞったものである。

「二度ある事は三度ある」に違いないので、電車をあきらめて三度目(9月)は飛行機にした。三度目は予定通り飛び立ったものの、不意の乱気流でお尻が座席から離れるほどの大きな揺れに襲われた。メモ用紙とペンを取り出した位である。これは三度目の不運だったのかもしれない。

商売にもジンクスはつきものである。

ある日、2件の買い取り依頼があり、一人でお伺いした。1件目は、お着物20枚ほどの買い取りである。ところが、部屋に上がると畳紙(たとうし)に包まれたお着物のヤマが広がっている。よくあることであまり驚くことではない。今までの経験で言うと、実際はお客様のいう量の約2倍はある、と考えると間違いない。今回はそれ以上だったが・・・・・・。

2件目の訪問先はお着物と茶道具とのこと。問い合わせ先の情報が入った伝票には「着物少しと茶道具2~3箱」とある。お部屋に入ると、お着物が帯簞笥に5段。これくらいなら車に入るから安心、と思ったのは大間違いであった。お着物の査定を終えると、隣の和室には茶道具が所狭しと置かれている。やはり「二度ある事は三度ある」のである。

終わってみると、折りコンテナ(折りたたみのプラスティックの箱でみかん箱くらいの大きさになる)で5箱、風呂敷で10包みとなった。お着物は見かけよりずっと重いのが辛いところである。更に、玄関から道路まで階段で降りるお家である。勿論エレベーターはない。台車を使うわけにもいかず、手持ちで階段の上り下りとなった。

20140915

これだけの量となると、ワゴンの荷室に入れるためには箱の大きさとスペースをしっかり読み取らなければならない。狭いワゴンの荷室にきっちり無駄なく積んでいく作業は「テトリス」に似ている。25年程前にウインドウズ以前のDOS-Vのパソコンを月賦(牛丼2,000杯分のローン)で購入し、箱から取り出しての最初の作業はテトリスであった。

その単純で奥深いゲームはその音楽と共に忘れがたい。積み残しが出そうになる量を隙間なく車に積み終えた時は、テトリスに夢中になっていたことが無駄にはならなかったと思ういつものヒトトキである。

帰り際に、
○「この籐の椅子も持って行ってくれないかしら?」
●「もう無理です。車に入りません。」
と、後日の再訪に。

店に帰ると大量のお品物にスタッフはにこやかにお出迎え。
☆「一人で行くと必ずといっていいほど、大量になりますね。これは(吉時の)ジンクスですよ。」
★「確かにそうだね。この間は、いつも一人で大変だからと、二人で行ったら手ぶらだったものね。どうして、ヨミが当たらないんだろう。」
☆「それはジンクスだからですよ。」
★「ということは、買い取りを増やすためにはそのジンクスを信じて、いつも一人で行けっていうわけ?」
☆「仕事のためにはそれしかないですねえ。」

茶柱が立つと良いことがあると信じて、わざわざ安い茎茶を買ってきて、湯呑みの中で乱立する茶柱を眺めていた時代があった。当然、毎日柱は立っていたが良いことは起きなかった・・・・。

というわけで、茶柱より良く当たるくらしのくらジンクス、「一人で行くと重いが嬉しい」のご紹介でした。

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