結婚式応援レンタル
ある日、外で家具の補修をしていたスタッフに声がかかった。年の頃二十代のお嬢さんである。
「あの~、この椅子を貸してもらえませんか?レンタル料払いますので」
「え?この椅子をですか。ウチはレンタルはやってないんですけど、何に使うんですか?」
(映画制作プロダクションなどへの家具、着物などの貸出はしているが、個人への貸出はしていない)
「駒場にある旧前田邸ってご存知ですよね。そこで結婚式をやるんですけど、フロアだけで椅子が無いんです。参列者10人分の椅子を自分たちで揃えなければならないんです。でも、椅子だけを借りるとなると、普通の折りたたみ椅子を貸してくれるところはあるのですが、あの洋風のクラシックな雰囲気に合わなくて、できたらアンティークの椅子を借りたいと、アチコチさがしたのですがどこも貸してくれるところはなくて・・・・・・・・・近くのくらしのくらさんに相談だけでもしてみようと、無理は承知でお伺いしたんです」
「あの前田邸で結婚式をやれるとは知りませんでしたよ。それは素晴らしいですね。でも椅子を用意しなければならないとなると一苦労ですね。なんとか手助けができればいいのですが・・・・・」
「結婚式場というわけではないので、雰囲気に合った椅子を揃えたかったんです。なにせアンティークがとても似合う部屋なんです」
「わかりました。チョット待って下さい」
(スタッフで検討、貸出決定)
「でも、今は同じタイプの椅子10脚は揃ってないなあ、ちょっと待って下さい、倉庫見てきますね。」
(倉庫探すも在庫無し…)
結婚式場用に見初められた椅子たち
店頭にあるフランスアンティーク・ダイニングテーブルセットの籐の椅子4脚、ベントウッドチェア6脚が用意できるアンティーク椅子となる。
「1ヶ月後の結婚式当日、是非使わせて下さい」
「わかりました。お揃いではないのですが・・・・・・ただ、あと1ヶ月お取り置きするのは辛いので、当日の2週間前にお取り置きします。それまでに売れてしまったら勘弁してもらう、ということでも良かったら・・・・」
「そうですよね。そちらも商売でしょうから。売れてしまったらあきらめます」
「わかりました」
結婚式当日、会場に搬入された椅子たち
というわけで、嬉しい事か、悲しいことか、結婚式当日までにこの椅子たちは売れることがなく、無事結婚式の引き立て役を担うことができた。とても似合ってよかったとのこと。
「ご結婚おめでとうございます!新居の椅子が必要になりましたらいつでもご用命下さいませ」
補注
旧前田邸は加賀前田家の本邸として昭和4年(1929年)に建築されたイギリスチューダー様式の建物である。一時アメリカ軍の司令官官邸として接収され、後に東京都が所有、東京都の有形文化財となっている。平成25年には国の重要文化財「旧前田家本邸」として指定された。(東京都教育委員会HPより抜粋)