モノ語りヒト語り

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お店の賞味期限

呑川緑道(*)の桜も満開である。上野公園、千鳥ヶ淵などのような桜の名所ではないが、住宅地をゆるゆるとくねりながらの遊歩道となっている呑川緑道の桜はつましい。酔っぱらいもいなければ、人出ラッシュもない。生活と同居した控えめな桜が楽しめる。

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呑川緑道の桜(3月30日撮影)

その緑道から駒沢公園通りへ入ってすぐのところに「くらしのくら」はある。花見のついでに立ち寄って、リピーターになって頂いたお客様も少なくない。

そんな桜の節、春のセールが3月26日(木)よりスタートした。きものは春に一番似合うせいか、アイテム部門お買い上げのトップである。きものスタッフ2名で、てんてこ舞いであった。15年目ともなるとお客さまのほとんどが顔見知りである。お名前がわからなくても、メンバーズカードを出されるお客様がほとんどなので、セールもメンバーズ限定のようなものである。

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春のセールご案内葉書

セールの時に「お久しぶりでーす」と歓声があがるのは、しばらくお見えになっていなかったお客様がフラリとご来店いただいた時である。遠方からセールの度に来て頂いているお客様も多い。
今日も10年ほど前に深沢から西荻窪へ引っ越しされたお客様がご来店、「来たわよ、1時間かけて・・・」と苦笑いされる。

こんな時に店の経過したトキを思い起こす。よくまあ、潰れずにきたものだと思いつつ、お客様と笑顔を交わす。

食品には賞味期限や消費期限がつきものである。お店に賞味期限は無いのだろうか。

この小さな商店街を見渡しても、この地に生まれ、家業として運営している店を除けば、店の移り変わりははげしい。お隣さんは、焼肉店→酒のスーパー→宅配ピザ店、反対側の店は、ガソリンスタンド→焼肉店→マンション、隣は英国家具店→ケーキ店、そのとなりは焼肉店→自然食品店→中華料理店、その隣は中華料理店→花屋さん、その先は和菓子店→イタリア料理店→ロシア料理店ともう10年前の風景が思い出せないくらいの変遷である。

お店の移り変わりは、平均5~6年であろうか。店にとって消費期限とは、店の運営ができなくなるということである。それは、ゆっくりと売り上げが落ちて(賞味期限)、閉店を迎える(消費期限)ということであろうか。

で、「くらしのくら」の味はどうなのだろう?

セール期間はまだまだ多くのお客様がお店を楽しんでくれている、と実感できる。だが、普通の日は、住宅街だけあって人通りがあるわけではない。お店の味が落ちているのではないかと心配になることがある。

そんな時、イギリスアンティークの小物を扱っている店主が3年ぶりにご来店した。「久しぶりにきたけど、ずいぶんいい品物が入ってきているね」と褒めて頂いた。自分たちは毎日みているので、変化がよくわからない。だから、そのような感想をお聞きすると、賞味期限はまだあるかもしれないと少し自信を取り戻す。

一方、壁も床もエアコンも賞味期限はとうに過ぎているのは誰にでもわかる。夏になると、エアコンはブーンと低い唸り声をあげるようになった。点検をしてもらったら、「まだまだいけますよ」とのことだが、私達の判断では消費期限切れである。床はところどころで擦り切れ、壁はホワイトが程よい古色になっている。これも、期限切れであろう。

というわけで、更なる賞味期限の延長を図るべく今年はお店のリフォームに挑戦です。

(*)新町あたりの品川用水からの漏れ水と、深沢周辺の湧き水の池から流出する水が合流して始まり、世田谷区内を約2キロ流れた後、目黒区八雲を通り、緑ヶ丘で九品仏川と合流、大田区から東京湾に注ぐ全長14.4キロの河川です。呑川の両側には、かつて川の土手に植えられた約300本の桜が今も残っていて、園路や川を覆うように枝を広げています。春の花の時期には多くの人の目を楽しませ、夏には散歩を楽しむ人などに木陰を提供しています。(世田谷区HPより抜粋)

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