15の春
「くらしのくら」がこの6月、満15歳を迎える。(会社は2015年4月30日で第15期期末となる)
もともとここに住んでいるオーナーのお店を除けば、この商店街では古株の仲間入りとなった。
苦節15年と言いたいところだが、さして大きな苦労も無く、飛び抜けた躍進も無く、ボチボチと生きてきて、振り返れば高校1年生になっていた、ということだろうか。
15年前のお店を写真で見ると、今とは全く違う風景で驚く。入り口には30本ほどのハンガーラックに洋服、中程にワイヤーシェルフが20台、そこに食器が溢れんばかりに積み重ねられていた。食器類は贈答品のたち吉や香蘭社などもあったが、有田のメーカーから大量に取り寄せた新品の雑器の類が多くを占めていた。
「あなた、このような食器を置いていてはだめよ。もっと、質のいいものを揃えないとお客さんつかないわよ。駒沢の近くに◯◯という食器を扱っているお店があるから、一度見に行って御覧なさいな」
私達のお店はリサイクルである。新品を扱っているお店は参考になるのか。でも、行ってみた。5坪ほどの小さいお店である。全国各地の作家の方の湯呑みや飯碗が、木製の違い棚にゆとりを持って並べられている。志野、備前、萩、など各地の焼き物がそれぞれの個性を輝かせてそこにたたずんでいた。思わず手が伸びる。このようなウツワがこの地域の人たちの生活に入り込んでいるのだ。その落差は相当なものである。リサイクルといえども、安ければいいとは考えていないのだ、と開店してから教わったのである。
そのことを契機に、オープンから1年半後、店舗の商品と棚を大幅に入れ替え、更にきものと貴金属のコーナーを新設した。ウエッジウッドやロイヤルコペンハーゲンの洋食器、輪島塗などの漆器、古伊万里などの骨董を増やしていくと、時をまたずに、同じようなお品物のお買い取りが増えていった。「類は類を呼ぶ」のである。
畳コーナーを作り、きものを扱ったのも「きものが欲しいんだけど、無いの?」と言われたのがきっかけであった。周囲の仲間の反応は「きものなんて今どき売れないよ、やめたほうがいい」というのがほとんどだった。時間はかかったが、今は「くらしのくら」の売り上げの40%をきものと貴金属が占めている。
思い返せばお店が毎年のように様変わりしていったのは、お客さまのアドバイスや注文があってのことである。言い換えれば、店主はあまり考えていないということである。
お客様からオーダー受けたままでお応えしていない案件がひとつある。コーヒーコーナーをつくることである。
「お茶を飲めるスペースをつくってよ、コーヒー高くてもいいから。この辺、一つも喫茶店ないんだから」。
今まで、スペースの確保が出来ず先送りとなっていた。そんなこんなしているうちに、近くにコジャレた喫茶店がオープンした。もう、リクエストは無効なのかもしれないが、今年は15周年である。このお客様の声に10数年のノチお応えするというのも良いのではないか。遅ればせながら、お店のリニューアルプランの中でコーヒーコーナー新設を検討中である。
5月1日の第16期を迎え、「くらしのくらのありかた」なるものを作った。昔で言う社是、経営指針である。そのうち、第2の「ヒトをリサイクル」というのは故タウン服部社長の言葉をいただいた。第6の「無理はするな、油断もするな」は私の叔父(百姓)が常日頃言っていた台詞である。
第7の「明日の方針より今日の現場」は私が映画制作を担っていた時の合言葉「明日の方針より今日のロケマネ」のモジリである。パクリやらモジリやらでオリジナルが少ないのが気になるが、言わんとする所は押さえているのでご容赦を。
「くらしのくら」のありかた
1.仕事の価値はヒトが作る。
どんな高価な商品があっても、それを活かすか殺すかはスタッフの人間力と仕事力にかかっている。
2.ヒトをリサイクル。
スタッフとその家族がより幸せな生活を築いていく事ができる仕事を目指す。
その結果として、より良い会社になりたい。
3.モノをリサイクル。
捨てる文化」を捨て、モノの価値を再発見し、その歴史と文化を引き継いでいく。
4.リサイクルをリサイクル。
リサイクル事業の社会的価値を高め社会貢献をしていく。
5.リサイクルであっても脱皮する。
保守的にならず、常に新しいリサイクルのあり方、新しい業態を目指す。
6.無理はするな、油断もするな。
無理をすると続かないが、気を緩めると失敗する。
無理な成長(営業利益)は追わない。
7.明日の方針より今日の現場。
立派な方針を立てるより、現場の声に耳を傾け実行する。