自腹を切る仕事、責任を取る仕事、国に助けてもらわない仕事、 誰もやらなかった仕事
昔のことだが、映画の仕事をしていた時に「映画はお金を払って観なければ、本当の批評は書けない」と言っていた映画評論家がいた。その評論家は、確かに試写会で見かけることがほとんど無かった。映画はテレビと違ってタダで観るものではない、出かけていって、他の見ず知らずの客と笑い、涙し、怒り、「その時間だけ同志になる劇場」で観なければならない、とその姿勢に共感したものである。
このことを思い出したのは「オガールプロジェクト」のアドバイザー、グッチーこと経済金融評論家の山口正洋さんのインタビューを聞いた時である。オモシロすぎて書ききれないが、簡単にまとめると「補助金に頼るとロクな事業にならない。なぜならお金を出す行政も、補助を受けて事業を行う自冶体も、失敗したところで誰も責任を取らないからだ。自分たちで金を出して事業をやることで初めて本当の成功を勝ち取ることができる」ということだ。補助金で立派な建物を作っても、その維持費は誰が負担していくのか。民間が企画、事業をしていけば銀行というフィルターが入り、失敗を避けることができる、しかも民間が施工したほうが安くあがる、など「目からウロコ」の話があふれていた。
山口正洋さんは岩手県紫波町(しわちょう=盛岡駅より東北本線で20分)で補助金に頼らない公民連携で「オガールプロジェクト」として地域の活性化をはかってきたブレンでありアドバイザーの一人である。
「紫波町子育て応援センター しわっせ」(写真:オガールプロジェクトHPより了解を得て引用)
人口たった3万人ほどの町である。世田谷区は84万人弱であることを考えると、その小ささがよくわかる。今や駅前の広大な土地10ヘクタールにあるオガールに年間80万人が訪れることになった。
何もなかったスペースにまず作られたのが図書館だったという。それがセンターのようになり、人が集まるとなれば病院が入り、そして物販、飲食の店が入ってきたという。図書館がこのプラザのスタートだったのだ。それを予測し、自信を持って進めたスタッフの知恵と勇気が素晴らしい。
つい最近のインタビューでは
「バレーボールのコートを作ろう、と提案したらそんな専用コートはどこにもない、と反対された。どこにもないからやるべきだ、とフランスまで行ってコートの床材(日本では作っていない。バレーボールのコートの床材は転んでも大丈夫なように柔らかくなっているらしい)を調査したとのこと。その専門工場では日本から来た人は初めてと言われたらしい。たった一面のコートだが今や全国から使用予約があり、世界各国のバレーボールのチームからも予約が数十件入っている。今にバレーボールの聖地といわれるようになりますよ」
と自信たっぷりであった。
バレーボールやバスケットボールなどで使用できる多目的コートにしないと国からの補助金は出ないらしい。だから、日本中多目的コートだらけで、バレーボール専用コートは日本にひとつも無かったというのは驚きである。
オガールベースの中核施設、バレーボール専用体育館
フランス語の”Gare(駅)”と”おがる(成長するの方言)”でオガールとはオシャレではないか。
オガールプロジェクトの「補助金やめますか?それとも人間やめますか?」というパロディが、その具体的な実践の経過を知ると、今の寝ぼけた私達日本人に突き刺さってくるのだ。
来年は是非、社員旅行で行ってみたい!
オガールプロジェクト
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