モノ語りヒト語り

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「知りたくないの」リサイクルの世界!

TOKYO FMの「キープオンスマイル」という山寺宏一さんの番組(3月13日放送)で紹介された話である。

アメリカのデユークさんが16歳のお嬢さんの誕生日のプレゼントに一台の中古車を買った。その車のダッシュボードの中に一通の手紙が・・・・。

「この車を買った方へ。(略)母は先日、六歳になる私の娘と叔母と共に自宅の火事で亡くなりました。母が最後にこの車を運転したのは亡くなった日。(略)火事で家族と我が家を失った上に母と娘との最後の絆であるこの車を失うことになりました。でも、あなたのことを怒ってはいません。(略)後部シートで数え切れないほどオムツを替えました。きっと何処かに赤ちゃん用の乳首やクレヨンがあるはずです。多分チキンナゲットも。ダッシュボードに汚れた場所があるかもしれません。娘はいつもそこに足を置いていました。運転席側のフェンダーミラーの凹みと助手席のドアの凹みは娘が数ヶ月前に自転車を追突させた場所です。(略)ちなみにこの車の名前はシルビアです。名前を変えないで下さい。もし、シルビアを手放す時は私を探して下さい。今は買う余裕がありませんが、うまくいけば買えるようになっているはずです。(略)あなたとシルビアの幸せをお祈りしています」

これを読んだデユークさんが自分のSNSにこの手紙を投稿したところ数万人の「いいね!」が。そのうち、売却したサブリナさんにシルビアを、お嬢さんにも車を、という声があがり、クラウドファンディングでの募金が始まった。参加者400人、目標12,000ドルに対し現在10,000ドル(約114万円)を超えたとのこと。

16歳で運転免許をとることができるアメリカ、誕生日プレゼントが中古とは言え乗用車であるアメリカ、クリーニングも補修もされないまま中古車が売られるアメリカ、それをさほど気にしないアメリカ人!いかにもアメリカ的で、そのスケールの大きさに脱帽である。

娘と母を失い愛車をも手離さざるを得なかったサブリナさんの切々たる思いがこの手紙で伝わってくる。思い出の品というのは、どんな人にも一つや二つはあるもので、いない人の記憶を蘇えさせる品物はとりわけ大事なものに違いない。おそらく経済的な事情で売却することになった時、思わずこの手紙をしたためたのだろう。

でも重すぎる話である。その事実ではなく、それが売り主から買い主へ直接メッセージされて波紋を呼んだという点だ。私たちは常日頃、そのような様々な事情(明暗いろいろだが)を抱えた中古品を売り買いしているので、引っかかってしまうのである。

私たちのリサイクルの現場を振り返って見る。

売却する人は、「この品物を大事にしてくれる人にわたればいい」と思う。ときには、それが査定金額よりも重要な要素であることもあるくらいだ。でも誰に売られたかまでは知りたくはないのが実情だろう。

購入する人にとって大事なことはその品物の見定めである。その際、最低限必要なのは中古品の経過年数、生まれ故郷、品質である。次に「どんな人が持っていたのか」だろう。「この茶碗は七十代の方がお茶をやめて、誰か必要な方がいれば是非大事に使って欲しい、ということで手離されたんですよ、三十年ほど前のものですね」という程度のイキサツはお話することが多い。自分の手元に引き継がれた経緯がわかれば、それはそれで安心できることである。

一つとして同じ人生が無いように、中古品にも一つとして同じ商品は無い。そして、バトンを受けた人が知らない複雑なイキサツを抱えながら、中古品は再スタートを切る。まさにRe-bornなのだ。

私たちはそんな中古品の買い取りに立ち会い、大げさに言えばその人生も垣間見ながら、物を引き継いでいく仕事をしている。
だから、私たちはなかなか新品の販売に力を入れられないのだが・・・・・・・・・

リサイクル自動車「シルビア」にCheers!

「あなた(リサイクル品)の過去など知りたくないの、済んでしまったことは仕方ないじゃないの」(歌菅原洋一 訳詞なかにし礼 1965年)

補)まれに、イギリスの小学校のスクールデスクのように、補修をせずに、そのキズアトそのものが中古の価値となる場合もあるのだが・・・・・・(くらしのくらHP参照

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